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展示と・・・

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先日、お花の作品展の展示構成のデザインをする機会をいただいた。頂いたイメージはずばり、アルバアアルトがデザインした花器のアアルトベースということだった。

僕にとって、北欧といえばヤコブセンやワグナーなどの良質な家具とインテリア・・・それとアルバアアルトだ。

北欧の夏季は白夜、冬季は寒さの厳しい・・・暗くて長い冬・・・、

そんな厳しい外部環境から身を守る快適な室内空間の要請により、家具やインテリア空間が発達したのではないかと思っている。デザインとは半強制的な必要に応じて展開し発達するのだ。確かにワグナーの椅子のすわり心地は素晴らしい。長時間座っていられる・・・。白夜と針葉樹に囲まれたアアルトの空間はきっと・・・。いづれ体験してみたい。
話は一気に変わり・・・、中華料理の極意について・・・。
酢豚でも鶏のカシューナッツ炒めでもその具材となる肉や野菜のサイズは、一緒にいためられる具材のサイズと極力そろえられるらしいとどこかで聞いた。
例えば酢豚の豚肉は玉ねぎ等の野菜のサイズに合わせて少し大きめ・・・、鶏のカシューナッツ炒めの鶏肉はカシューナッツにあわせて少し小さめにカット・・・、チンジャオロースの具はみな細切り・・・、ということらしい。

これは火の通りも関係することだろうが、食べやすさや味のミックス具合など、食べる人の感覚を芳醇に広げるために何かをダイレクトに直接つなげるための工夫だと思う。何かと何かは何でも良いしそのつど変わる物だが、そのサイズをそろえ、それを一緒に口の中に入れるという行為を通じてそれは何かにつながることだとは思う。例えば食材自身と舌の感覚、歯ごたえの違い、食べることの容易さ・・・、そして瞬時に了解できる解りやすさ・・・。中華料理の知恵なんだと思う。かなり深い・・・。

花と北欧と中華の相関性についてはこの際不問として・・・。
そんな事を考えながら、お花の作品と花器、作品展示のための仕掛けや什器が来訪者の意識の中でシームレスでつながるような、そしてそれが来訪者の感覚に直接、接続されるような展示を目指した。
具体的にはお花の作品から、アアルトベースを使った花器、展示什器までを限りなく小さく繊細なデザインとし、そしてサイズをそろえた。いわば微分化されたデザインである。
結果、ある種の物理的な透明感と、解りやすさという意味での透明感という2種類の透明感が混在する、デリケートでナイーブな・・・胞子が充満するような空気感のある空間となった。
入り口に設けられた照明は、長さが1.2mのガラスチューブにプリザーブドされた花弁を一杯に詰め込み、内部にLEDライトを仕込んで光る花弁の筒の照明とした。
花台は一つ一つの作品にそれぞれということで約30台用意した。それぞれはすべて高さや形状が異なり、統合より分散、集合より離散といった感じで設えた・・・また9mmの鉄筋のみで支える、アドリブで展示を変化させることもできる納まりを持つ繊細なものとした。
会場の中央にはウェディングドレスなどに使われる、オーガンザという薄くて精密感のある生地で、アアルトベースをかたどった空間を設え、人間の皮膚感覚というか、蜃気楼のように”そこにある”という状態を作り、会場に奥行きをあたえ、内部にはアロマの香りを充満させた。
空間を微分化すること・・・。各パーツのサイズにより空気の密度と来訪者の感覚の密度をそろえること・・・。
こんなことを考えながら、展示と来訪者の感覚との接続が容易で身体化しやすい、消化しやすい、つまり心地よいデザインとは何かを考えた。