Column

設計のこと

われわれは男女の混成による設計チームです。特記するまでもなく、建築を普請するということは、多様な価値観、人との連携や協力の上に成り立つものです。施主、設計者、エンジニア、現場監督、各職方・・・。実にさまざまな業種の連携によります。
特に、設計時においてはさまざまな可能性をひとつの建築に収斂させていかなくてはなりません。多様な価値観に基づくたくさんのアイデアを机上に並べ、その中で取捨択一してゆくような設計がわれわれの理想です。そしてたくさんの選択肢を準備することはわれわれの使命です。設計者が一人であるということはその可能性の幅を単純に縮小しているのではという危機感により、このような複数人による設計チームを組織しています。アイデアはたくさん、そして多様であるほうが面白いのです。

建築の設計とは未来を創造することです。どんな建築でも未来に向かって作られます。ですが、未来は不確定だし、予想がつきません。趣味やテイストの変化や、用途の変更、間取りの改修・・・。人はみな気まぐれです。われわれの仕事は、この気まぐれな未来へのイメージの断片を集め、アレンジし、来るべき未来への射程距離が長い建築として今現在に組み立てることです。小説家が具体的なイメージの断片を編纂し、まったく新しい物語を小説として生み出す行為と似ています。何を手がかりにするのかは施主それぞれです。未来を夢見て楽しみながら、そして注意深く建築を立ち上げていくとそこにはまぎれもなくそこにしかない建築が立ち上がるのです。

既成概念のとらわれることなく、
住宅であれば、LDKなどと画一化されたシステムではなく、
サロンであれば、ただ単純に一列に配置された鏡台ではなく、
ショップであれば、見せるためだけの陳列棚等ではなく、
ただただ利便性のみに片寄った形式ではなく。

空間と出来事や活動の生き生きとした関係・・・
日常的でありながらも新しい豊かさとユーモア・・・
時代を超えた普遍性のあるアイデア・・・
動的でありかつ流動的なおおらかな空間・・・。
そして楽しさ。

そんな建築を求め提供してゆきたいと思っています。