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海の上

僕はたまにヨット乗る。

なぜなら、ヨットから、すなわち海上から見る街の風景が好きだから。自分のテリトリーから完全に離陸し、自分を俯瞰できるような気がするからだ。そこはまさに天上の世界、否、海上の世界だ。
実際、僕は重力との邂逅を望む職能であるゆえ、空に上る事は今でも好まない。だから海だ。飛行機には決して好んで乗ることはない・・・。
同じ理由で、勤務時代よく会社をサボって浅草から船に乗り隅田川をくだり東京湾を経由して横浜に漂着しそのまま横浜の映画館で映画を鑑賞後そのまま自宅に直帰という定番コースを愛用していた。特に春に行く横浜への漂流は実に素晴らしい。脱皮を終えたザリガニみたいな気分になれる。それはずいぶん昔からの僕の癖だ。

今日は船に乗るわけにもいかず当時の僕を陸から眺めていた。まだ若い時分の僕をだ。
そこには10数年昔の僕が、何かに抗ていた。もし、今僕がその昔の僕に向かって、お前は37歳の今になってもなーんにも変わっちゃいないよ、って大声で教えてやったらどうだろう。きっとその場で気絶するか、挙動不審の挙句、海に落ちて溺死することだろう。まったく。

だが、翻って、10数年後の50歳前後の僕が、海の上から、今の僕に向かって、お前は、今でもなーんにも変わってないよと悪態をついたくれたらどうだろう。きっと今の僕はうれしくて、悶絶するだろう。なぜなら、今の僕は変わらないことが最も難しい事だと思っているから。隅田川の僕も当時は変わりたくなくて必死だったんだと思う。ただ当時はそれに気がつかなかっただけだ。

変わらないこと。変わらないには常に向上し、もがき続けていなくてはならない。隅田川を犬かき泳ぎで、逆走するようなものだ。これからも変わらないため、何かを探し続けて行かなくてはならない。