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多摩川のピッチ

建築設計の仕事とは、地球の表面のエンジニアリングとだと思っています。

美しく精密に統制され合理的、機能的なものはそれだけで美しい・・・、F1マシーンと同様です。そんなイメージで建築としての構造や設備そして空間のサイズやプロポーション、構成のバランスを計ることが建築設計者の仕事です。建築の形態はその結果としてその成り立ちと組成を示す物でしかありません。

とはいえ、それだけでもないのです。そしてそれが何より私が建築設計において探し続けている何かなのです。

地球の表面のディテール、つまり日の光や風の流れ、地形や環境が重要なファクターです。そしてさらに地球の表面に生活する我々の体の振る舞いとそのサイズ、人の感情や気持ち、居心地感などの感覚的な側面からも建築を設計できたらな・・・と。私の仕事はまづここから始まります。

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例えば・・・、このような風景から他者との距離感覚やそれを取り巻く環境の心地よさの物理的距離や感覚距離を観察することが出来ます。人が座っていく順番や、グループそれぞれの構成人員数、そんな人間の生理的な感覚を数値に置き換えることが設計者の素養として必要なのではないかと。

規則とか秩序とかルールとか・・・そこに縛られていては気持ちのよい空間は出来ません。有名無名を問わず美しい建築や時代を超えた建築は”それ以外の何か”が存在するはず、ということを古典が教えてくれます。

二子多摩の駅から見下ろすの土曜日の多摩川の風景です。カップル達が等間隔のピッチで並んでいます。これも一つの振る舞いです。京都鴨川でも同じような風家が見られますね、ピッチに違いはあるのでしょうか?順番は?季節や時間によってピッチに変化はあるのでしょうか?それぞれの距離は人の感覚や生理との関係性があるのでしょうね。カップルだけではなく、シングル、家族だったらどうなるのでしょうか?はたまた同性カップルだったら?川岸の素材とピッチには関係があるのでしょうか?川の流れの速度とカップルの滞在時間には相関性があるのでしょうか?
カップル達の行動は人の根源的な振る舞いを色々と示唆し、考えさせられます。

一つ間隔があいたところは荷物が置かれているようですね。物と人のピッチも同じだったりしているようです。

実際距離を計測してみたいという願望にとらわれつつ・・・、構造事務所へと打ち合わせを急ぎます。

さてさて・・・。