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ストラスブール

パリから東のほうにストラスブールというとっても美しい街がある。
遠方からの時間に限りがある旅行者にとってのプライオリティーはそんなに高くはない地理条件で、僕自身も散々迷った挙句に予定したところだ。
が、なぜそこまで僕をひきつける魅力があったのか・・・。
もともとストラスブールはドイツとフランスの国境に位置する街で、歴史上、フランスになったり、ドイツになったり戦争のたびに行ったり来たりとその歴史を翻弄された街だ。
フランスとドイツ、確かにアルプスよりで隣り合った国かもしれないが、
例えば絵画で言えばフランスは柔らかで明るい印象派、モネやセザンヌ・・・ドイツの音楽はベートーヴェン・・・、
哲学ではフランスは現象学などのフッサールやドウルーズなどの個人主観主義・・・、ドイツであれば理屈のニーチェに観念的、論理的なカントにヘーゲル・・・。
フランスは明るい太陽、ドイツは黒い森・・・、ラテンとゲルマン・・・、かなり大雑把で当然一概には言えないが、かなり違う国民性でいらっしゃる・・・。
そんな国の間を行ったりきたりとした街だ。

僕がこの街に興味を持ったのは、そんな歴史だけでなく・・・、なんとこの街への中心には車での進入は制限されていて、街中にネットワークされたトラムを使って街中にアクセスする、まさに歩行者のための街だからだ。 人口もたぶん20万人くらいのそう大きくはない街だが、未来の街の可能性を秘めた街だった。 身体と街がダイレクトに連続し、使いやすいとか安全とかそういう事だけではなく、エコだとかサスティナビリティーとかそんな次元ではなく、ただひたすら快適で街を楽しめるのだ。

街中には小川や長い年月を生き続けてきた街路樹、そこらじゅうにあるオープンテラスカフェやアート、そして街の中心の広場ではかっこよいご老人たちが元気だった。
ヨーロッパを旅していて思うことは人生の先輩としての老人たちが若者から尊敬のまなざしを向けられているように見えるということ、そして逆に、老人たちが若者から尊敬されるよう、艶やかさを持続しているということ・・・。早くお前も俺みたいに歳を取れよ、かっこいいオヤジになれよ・・・、と老人はいっているような気がする。そしてこの街は特に老人が元気だった。

街のトラムもほんとに美しい。デザインこそが街を彩り、市民を活気付けてゆくということをきちんと皆が理解し、そしてそれを実践している。デザインは街を育て、人はデザインを育てる。見事に完結した黄金のトライアングルだ。

翻弄され続けた歴史に終止符を打つべく、御上からではない自身の発想による自立した街づくりなのだろうか。そんな反骨精神と、形ばかりの地方分権ではない何かへの気合が感じられた。そしてなんだかとってもフランス的だ。

今後、日本の人口は増えることはないだろう。東京以外の都市ではだんだん車も減り、消費も減り、街も小さくなっていくということだ。
その事実をしっかりと受け止めた上で、街をどのように未来へとつなげるか・・・期待を持って次世代に渡すことができるのか・・・、そしてコンパクトシティーはいかに可能か・・・ということを真剣に考える時期なのだと思う。