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美容室の鏡台

現在、美容室の現場が進行している。そこで使用される鏡台について、設計当初から施主と様々に相談を重ねてきたが、なかなかまとまらなかった・・・。こちらがよい案を提示し切れていないということが大きな原因だが・・・、施主自身もイメージが固まっていなかったように思う。

いくつかの検討の結果、徐々に方向性が見えてきた。
床の仕上げが白いタイルなのでそのタイルが連続して隆起してカウンターになるような感じ・・・、そうすれば空間に一体感も生まれるし、施主の望む、シンプルだけど存在感のあるという、まるで禅問答のようなリクエストにも対応できるのではと・・・。

早速模型で検討を始めた。そんなに広いサロンではないので、鏡台のサイズと空間のボリューム、サロンの明るさと材質のバランス、そして機能性と快適性・・・、それらの複雑な関係を適切に判断するためには、模型による検討がもっとも確実だと考えたからだ。

いくつもの案を経て、最後に到達した形は、天板のみが水平で、その他の脚部やカウンターの形状はすべて斜め、まるでダイヤモンドのようなクリスタルカットを施したカウンターになった。そして同時にそれは平面図や立面図といった従来のような2次元の図面では表記できないような立体でもあった。
僕らは、この模型の立体を可能な限り測定し、その模型を元にコンピューターグラフィックを作成し、そこから各クリスタルカット面をスキャニングし、製作図面を作成した。

主な素材は、硬質なシャープさを表現するため厚い鉄板による塊のようなモノコック構造となった。

通常の設計やデザインは、2次元のスケッチや図面を通じて最終の形を表現し、その図面を元に実際の製作を行うというのが、一般的な建築や家具の製作プロセスだと思う。もちろんこの方法が最も合理的だし、汎用性があると思う。

だけど、人によるかもしれないが、人間の立体の把握能力ってそんなに高いものではないのではないか?

やはり、立体を考えるには立体で検討し、そしてそこではじめて、自身の知覚や立体の把握能力を超えた、より美しくも合理的な形状をものにすることができるのではないか。つまり、立体によりはじめて気がつくことはたくさんあるのではないか・・・と。

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今回の方法は模型による立体で最終的な形状まで決めてしまい、そこから、模型のスキャニング、コンピューターグラフィックへの落とし込み、そして製作図面の作成というように、通常の方法をまったく逆にトレースしたものである。

この方法は施主にとってわかりやすいということはもとより、自分にとっても何か未知なる物を提示してくれるのではと・・・、そしてより合理的な何かを提案できるのではと考えた。

作るものや形ではなく・・・、造り方、考え方の方法を考えることが必要だと思っている。