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改修工事の現場

現在進行している改修工事の現場です。

改修工事は人間関係に似ている・・・、と思う。

すでにそこにある建築、空間との対話が設計者に対して要請される。

そしてその対話を通じて、今まで気が付かれていなかった、はたまた想像だにできなかった新たな空間の可能性の萌芽をその建築に埋め込むことができればその仕事は成功である。

つまりはその建築といかにダイレクトに交信できたが重要なのである。

人間関係も似たような感じ・・・、ある人との交わりにおいて初めて生まれる新しい個性、はたまた自分自身も気が付かなかったような自身や相手のキャラクターに対する気付き・・・。こんな人と人との交わりが理想だと思っている。そして人との交わりはいつもうまくいくとは限らない・・・。しかし、この改修工事は僕にとって仕事であり使命であり、成功は命題でもある。だからうまくやるしかない。

今回の改修工事の現場でも僕は時間の許す限りその建築との対話を試みた。朝、昼、夜とそれぞれの時間に訪ね、いつしか自然に彼と話をすることができるようになった。そして普段は無口な”彼”からは”それを考えるのはあんたの仕事だろう”というつぶやきとともにいくつかのヒントをもらった。

彼と約束したことは、改修にあたり。決して何かを捨てないこと、そして壊さないこと。

今あるもの、コンディションの上に新たな何かを付加、付与するという所作のみで空間をまったく新しいものに生まれ変わらせようと考えた。
新しい形を作るのではなく、現状に静かに寄り添いながらも力強く未来を語るようなそんな新たな何かを付与たいと思った。

付加するデザインは、シンプルとは逆ベクトルの思考で、正直過酷な手法である。

結果的にほとんど物を壊すことはなく、つまりはコストも不要にかけることもなく新しい空間を手に入れることができたのでは・・・と思う。

とにかく難しい現場ではあったが、何とか良い形にまとまりそうだ。壊さない、モノを付加する、という過酷な条件を設定することにより、それをクリアしたところには必ず何か新しい、自身も思いも付かなかったような新しい空間やアイデアが生まれてくる。
つまりは、考え方をデザインすることが最も大事だ。

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写真はラウンジスペースになる予定のスペースである。

既存建築に耐震補強を行い、その鉄骨構造体をそのままインテリアの要素として、大きな空間を緩やかにそしてダイナミックに分割するパーティションとして活用しようとしている。すべてはこのように、機能により要請される形と、見え方として要請される形を限りなくシンクロさせることにより、空間に必然性にともなう居心地のよさ、空間と人が互いに”はまる”何かを求めている。

居心地・・・、ただ直接それを求めると確実に押し付けがましいものになり失敗してしまう・・・。

そうではなくてモノの成り立ちや組成をありのままに表現することで、2次的副産物として何か良い空間が現れるのではと。。。そしてそれを居心地のよさといえるのではないだろうかと考えている。

この現場ではこれから家具の搬入をむかえ、来月のオープンを目指している。

空間的にもプログラム的にも新しい試みです。楽しみにしていてください。