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静岡と横浜と僕のシナプス

僕らの設計事務所は静岡と横浜にある。

静岡の事務所は、一日に新聞屋さんと郵便屋さんくらいしか訪れることのない山の中の大きなケヤキの木下にある。移ろう木陰と騒々しい鳥の声を聞いているだけで1日が終わってしまうような、そんな喧騒の中にある。

横浜の事務所は駅の真横の6階に位置する。一日中駅のロータリーと行きかう電車を見下ろしているだけで1日が終わってしまうような、そんな喧騒の中にある。

なぜ、そのような体制にしているのか・・・。

決してそれらの場所や、その対照的な環境が重要なのではない。重要なのはその2箇所の距離感と移動の為の時間だ。
大体1週間に1〜2度往復をしている。
もちろん移動には仕事という目的があるのだが、最も重要なのは移動に費やされる時間だ。ゆったりと色々なことを考えることができる。進めているプロジェクトのこと・・・、施主のこと・・・、現場のこと・・・、時にプレゼンの殺し文句・・・、そんなことを縦横無尽に考えている。
それぞれ違う環境に身をおくことは重要だと思う。環境が変わると思考もリセットされアイデアを多角的に成長させることもできる。

思えば、僕は今まで2国、8県、12箇所くらいの環境で生活をしてきた。その度に、何か今までにない何かに出会ってきたような気がする。たぶん、一箇所に定着することを逃れるように、何かを求めてきたのだと思う。それは旅などでは決して体験できない何かだ。かなり古いが、浅田彰の逃走論みたいだ・・・、今でもそれが何かは分からない。

それは、移動によるシナプスの活性化だよ!!と我々の知恵袋のS氏が、脳科学を根拠に僕に判りやすく説明をしてくれた。いつもいつも彼は本当に頼りになる。もはや彼が僕のシナプスを活性化させているのかもしれれない。足を向けては寝られない。

いずれにしても施主の心をときめかせ、夢に大きな火を灯すには、まず自分がキラキラとときめいていなくてはならない。そのために、僕は今日も移動しながら僕のシナプスを鍛え、活性化し、そして愛情をこめて育てている。