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カルシウム水

留学時代のこと。
よく言われているように、イギリスでの食事はどうも・・・、ということに僕はまったく異論はない。その通りだと思う。イギリス人の友人に確認したところ、英国紳士たるもの、食べ物を美味いだのまづいだの云々することはいかがなものか・・・という、かたよった伝統的な価値観が食文化の発展の妨げになった・・・との事、真偽のほどは定かではないが、妙に納得してしまった。

イギリスに滞在中、仲良しのイタリア人がよくホームパーティを開いてくれ、そこでラザニアやリゾットなどをふんだんに振舞ってくれた。そしてその料理は僕にとって、未だにそれを超えるイタリアンに出会ったことがないくらいおいしいものであった。まあ、当時は貧乏で食生活に苦労していたという付帯条件があったからかもしれないが・・・。いずれにしても美味かった。

レシピを教わり、イギリスに滞在中に何度か自分でチャレンジしたが、これが予想に反し最高に美味しかった。

日本に戻ってきてから、まったく同じレシピで何度かチャレンジしてみたが、お招きした方たちには申し訳ないが、実はどうしてもその味に到達することができない。パスタもブイトーニの同じものを使っているにもかかわらずだ。

そこで、気がついた。これは水のおかげだと。イギリスの水はコップに取ると真っ白になるくらいカルシウムとマグネシウムが浮いている硬水だ。きっと、野菜なんかもそんなカルシウムまみれの水によって育成されたものなのだ。
そこはイギリスではあったが、イタリアもきっとカルシウムまみれの硬水ではないのではないかと・・・。そして、そんな水によって調理されることが条件として出来上がった伝統のある調理方法なのだと。いつかイタリアを訪問して是非、水を試してみたい。

日本の軟水を使って同じレシピで作っても、水が違えば材料は異なりそれに伴い味は異なる。
真偽のほどは定かではないが、そうなのかも知れない。イギリスのカルシウムまみれの水で作った、日本酒や水炊き、それで炊いた米などイメージすることすらためらわれてしまう。
食文化とは地域に根ざし、いかに奥が深いものか、そしてそれはその作られる環境、風土、文化によってのみオリジナルとして成立するものなんだと・・・。