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東京・T邸 断面から考える。

竣工して2ヶ月程度が経過した、東京都内の住宅街に建築されたRC造、地上2階、地下1階建ての建築です。

先週のブログでアップした静岡・I邸に続き、断面の構成から計画のアプローチを試みた事例としてこの建築を紹介します。

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まづは短辺方向、東西方向の断面スケッチです。
東側は区立公園として、美しい景観と豊かな緑が担保されており、反対に日中は子供達のにぎやかな声とプライバシーが保ちにくいというデメリットも考えられる環境です。

計画では、生活の主階を2階に設けることにより、外部からの視線をブロックして内部のプライバシーを保護しています。そして景観の優れた東面に床から天井までのフルハイトの開口部を設けて、東面にキッチン・ダイニング・リビング゙ルームと各空間を並列し、すべての部屋から豊かな眺望を楽しめるようなワンルーム空間としています。

東面の窓際には奥行きのあるルーフガーデン(坪庭)を設け、大きく外部に開放された空間を東側公園からプライバシーを保護する緩衝帯としています。

東面はほぼすべてガラス開口部としているため、鉄筋コンクリート壁式構造でありながらも開放性を確保するため、構造体は直径60mm程度の極細の鉄骨柱にて軽快に構成し、視覚的な開放性を担保しています。
難易度の高い構造形式ですが、ここは特に、この建築の構造設計を担当した構造エンジニアの技術の高さによるものです。

以上が開放性と、プライバシーの保護を両立させるための断面計画です。

西側は、西側道路よりの道路斜線制限により、上階に行くに従いセットバックしています。そして内部の階段をセットバックに寄り添うように、出入りの複雑な形状としています。この階段は鉄骨スケルトン階段で、内部にエッシャーの騙し絵、ラビリンスのような立体感のある空間を生み出しています。また、階段は、住宅内を立体的に風が吹き抜けるよう風の通り道としても有効に活用しています。

玄関からは、ガラス壁を通じてガレージのオーナーの自慢の自動車がいつでも眺められるように計画され、屋上、セットバックによって生じるバルコニーは積極的に緑化され、呼吸しているかのような多孔質な建築をイメージしています。

 

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次は、南北方向の断面です。

この敷地は、高さ制限、日影制限がかなり厳しく、計画では高さを抑えながらも、高い天井の高さと開放性を確保するかということに注力しました。

ここでは、半地下にガレージを設け、ガレージのスロープ部、そして駐車部のそれぞれ違う高さの天井にあわせるように、上階ではスキップフロアーの採用により、リビングの天井の高さ、3000mmを確保しています。スキップフロアーにより一段下がったリビングルームは落ち着きのある緩やかに囲まれた空間となり、反対にダイニングとキッチンは、西側開口部による豊かな眺望との相乗効果で明るく、清潔感のある空間となっています。

スキップフロアーは大きなワンルームとしての広がりを維持しつつもそれぞれの空間を緩やかに分離し、”開放感・ワンルーム”と”使い勝手上の空間の分割”を両立させる空間構成アイテムとなっています。

 

1階のガレージとしてのコンクリートボックスと、2階の寝室などのプライバシーを保護する上下の二つのコンクリートボックスで、その中間のリビングダイニングキッチンをサンドイッチした構成の住宅です。

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