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イチロー的構造

僕はもう昔から鉄筋工事が好きである。と書くと、どうも意味不明だが・・・、これはチョコレートが好きとか、本を読みながら知らないうちに寝てしまうのが好きとかといった事と同義の、完全に趣味嗜好の話である。決して僕自身に工事ができるということではない。

なぜ鉄筋が好きかというと・・・、例えば単純な四角い床であってもそこには力学上負荷が大きいところと少ないところが、あたかも地図に表現されている山の等高線のようなグラデーションで存在し、その荷重の分布に対し、直接的、数学的、理知的、合理的、つまり単純に必要な箇所に必要なだけ鉄筋が配置されるといったように、判りやすくも、矛盾なく、合理性のみをよりどころに工事されるから。複雑なコンディションを単純なひとつのルールに置き換えた物理の数式のようなものだから・・・。

そしてもうひとつ、鉄筋はコンクリートが打設されると当然見えなくなってしまう。その美しい裸体はコンクリートに埋め尽くされてしまうのだ。これもまたそそられる、神秘的だ。もはや一遍の詩歌のようにロマンチックだ。人には見えない、気が付かないところにこんな・・・ルールが・・・、まるでマトリックスのようだ。

ということだと思う・・・。どうでもよいけど・・・。

先日、配筋の検査を構造エンジニアと行った。今回のコンクリート製の床は、構造体の中に中空のアルミ製のパイプをいくつも並べ、構造体にチューブ状の中空部を造る・・・つまり穴だらけの構造体を造る方法を採用している。

構造体・・・、つまりコンクリートや鉄筋、鉄骨は多ければよいというものではない。つまり柱や梁も大きければよいのではない。それだけで自重が過多になり、バランスが崩れるということだ。さらには場合や箇所によっては強ければよいというものではない。と考えている。

誤解を招くかもしれないが、構造体に最も要求される性質は、強さつまり剛性だけではなく、粘り強さつまり靭性が大事なのだ。

喩えるならば、ただでかい曙の肉体より、しなやかスリムでありながらで瞬発力と粘り強さのあるイチローの肉体といったところか・・・。

まあこれは比喩として・・・、実際に素手で曙とイチローが闘ったら、九分九厘は曙が勝つではあろうが・・・。

そんなことで、今回は構造体自身の中に中空のパイプを埋め込むことによりたくさんの空洞を確保しながら構造体の重量そのものを軽減しスリム化し、それでいて剛性と靭性を確保する合理的な構造体を志向している。これが見えなくなるのはまったく残念だ・・・。

がそれはそれで神秘的・・・。

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