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クレーンパイロットハウス

今年もあっという間に年の瀬です。
やり残していることが多く、何から手をつけようかとあたふたする毎日です。
本年中に竣工しましたプロジェクトは本年中に、、、ということでまずはこちらから。

昨年の11月18日に紹介しました、クレーンパイロットハウスです。
災害時など率先して現場にかけつけることを使命と考えている、
建設揚重業を営む企業様のオフィスビル。

京浜運河に四方を囲まれたこの地域は、津波ハザードマップによると、GL+1.2Mが津波予想高さであり、津波被害を想定し、
1階はボールボイドスラブによるRC 純ラーメン構造で構成しています。
外壁はカーテンウォールとし、津波時には破損し(水の力に抵抗しない) 構造であるRC 柱とボールボイドスラブによるフラットなRC床が、上部空間を支えるというイメージです。
ボールボイドスラブの説明は後程・・・

2階は軟弱地盤対策として、建物の軽量化、及び「ヒューマンスケールの人間味ある快適な執務空間の演出 」として木造としました。
大断面集成材による大スパン加工とし、自由度の高く、温かみのある空間としています。

万が一津波がおしよせても、、、堅牢なRC 柱に守られ2階執務空間はオフィスとしての機能を保ち、会社としての使命である  ” 災害救助 ”にあたることを
現実として、真摯に考えましたオフィスビルです。

 

 

また、工業専用地域ということもあり、”オフィス”としての周辺環境は決して良いとは言えない。
初めて敷地を訪れたときに肌で感じた、無機質で冷たく、時間の流れのない、言いようのない感覚。
失礼を承知で、思わず社員さんへ「 体の感覚に異変を感じませんか?」と聞いてしまったほど。
ごめんなさい。
社員さんたちが、より良い環境で仕事に打ち込める空間を必ず作りたい!と誓ったのです。

 

周辺に遮蔽物のない敷地ゆえ、日差し対策としても、また柔らかな木質空間の象徴、オフィスのシンボルとして、2Mのはね出した庇を設けています。

協同設計者:マジックバス・ビルディングワークショップ
http://www.d2.dion.ne.jp/~magicbus/

 

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 無彩色の工業地帯の風景の中に、” 色 ” を取り入れ周辺環境へ存在感をアピールするとともに、
「我が社」の意識を高めることを考えました。

 

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エントランスホール。クレーンの滑車をイメージして構成した階段手すり。 

 

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大断面集成材の採用により、木造でありながら大空間を実現しています。
将来的なレイアウト変更も自由です。

 

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社長室は3方ガラスの壁として、透明性を演出しています。

 

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 応接室。オーナーさんご友人の施工による緞子(どんす)張り。
落ち着きのある上質な空間に仕上がりました。

 

地域の企業さまへのレンタルも視野に入れました1階大会議室。
コンクリート打ち放し空間とし、建物の堅牢さを演出しています。

 

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ボールボイドスラブは、独特のカプセル形状を効率的に配置した中空材により、床構造(コンクリートスラブ)に中空部を設けることによって、高い剛性を維持すると同時に、軽量性を実現した中空スラブ工法です。下階に梁型を見せることのないすっきりとしたフラットなスラブにできる工法です。

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竣工後、新社屋を訪れると、活気にあふれる社員の皆様が明るい笑顔で出迎えてくださいました。
オーナー様も
「社員の気持ちや、表情、身なりまで変化しています。」
「やはり環境というのは人を変えるのですね。」とにこやか。

建築空間が人に対して与える影響の重さを改めて感じ、気持ちを新たにいたしました。
今日もどこかの建築現場で、クレーン車を巧みに操縦するオペレーターさんを想像すると嬉しくなるのです。