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f-kross

美容室併用住宅が竣工した。
トップページのワークスの一番左のF-KROSSという建築です。ご覧ください。

もともと敷地には約2メートルの高低差があり、この独特の状況にいかにシンプルに応答する建築を築くかをテーマにしている。
シンプル・・・、なんぞやの免罪符かのごとく乱用されるこのフレーズ。シンプルとは、明らかなものを排除し、意味深さを付加すること。単純さの先に現れる意味深さ、豊かさ、思慮深さをさす言葉だと思う。ただ単純に単純なだけではない。
そしてシンプルと共にユーモアも大事な要素。存在するもの、ひと、空間などのあらゆるものをつなぎ新しい意味を作り出すことの触媒となるものがユーモアだと思う。
ということで、シンプルとユーモア。こんなことを考えながらこの建築を設計しました。

敷地の低いレベルに美容室を設け、その上階にダイニングキッチンを重ねた。結果、高いほうの地盤レベルに設けられたリビングレベルとは600mmの段差が発生し、丘のある敷地の上に、丘のある建築空間と共に生活するというフィクションを作り出している。空間に微妙な高低差を作ることにより空間に距離感を付与し、普段の生活に何かを与えられたらと思った。この距離感というフィクションが空間の豊かさや楽しさにつながる原動力になればとイメージしている。

竣工後、二人の元気子がこの室内の丘を飛び降りたりよじ登ったり・・・、中央のスケルトン階段に腰掛けながらキッチンのお母さんと話したり・・・、早速、空間を使いたおし始めた。

もちろん意図したことではないが、こんな風に今までにはない、想像が及ばない使われ方こそが我々の設計の意図だ。

そう、神社の境内にある大きな階段のように、その脇に鎮座する大きな欅の木のように・・・、そんな風に建築が在れたら嬉しい。さあ、この建築がどのように成長してゆくのか、楽しみだ。