以前、スチールフレームユニット、つまりよく現場にあるような仮設建物(現場小屋)の構造体を使って住宅を作った。本当によくあるヤツである。
従来、既存のユニットシステムであればこの一つ一つが独立したフレームユニット(2.3M×4.6Mでトラックの積載可能範囲により決まるサイズ)は単純に縦か横をそろえてならべることしかできないが・・・、我々が実現したユニット構造はこのユニットをずらしながら自由にならべることが簡単にでき、そして将来的に解体や並べ替え、そして移設が簡単にできるという、優れものである。(自画自賛ですみません。)
とはいえこのシステム、グッドデザイン賞を受賞しそれなりの成果と実績を重ねてきた。我々は最初のデザインとシステムの開発に携わったわけではあるが、その会社の社長はそのシステムを大事に育て、時に新しいアイデアを相談しあったりしている。
よくあるシステムの可能性を追求し、当たり前の技術を使いながらもある”一点”において画期的に革新させること・・・、これである!!。
震災の後、氏と話をした。ユニットを使って何か被災地の手助けはできないの?と聞いてみた。
氏は、なんだか便乗してるみたいだし・・・海千山千の人たちが多くて自分は少々距離をとりたいな・・・、といっていた。氏にとってユニットシステムは商売ではなく自身の夢、自分自身なのだということを僕はよく知っている。ユニット愛である。
だからこそ、ビジネスチャンスとばかりにそれを売ることにためらいがあったのだろう。氏の逡巡は痛いほどわかる。僕も残念だなという気持ちがなかったわけではないが、いつか氏が何かをしてくれると思っていた。何せ男気に溢れた熱血漢であるから、おとなしくしていられるわけがない・・・。黙っていられるほうが不自然だ。
そして、先日ついに氏から電話がかかってきた。一言、”やりますよ、手伝って!!!”そしてたて続けに問答無用のメールが送られてくる。
氏、いわく・・・。今建てられ提供されている仮設住宅は・・・。我々は選択肢を提供しなくてはならない。
仮設住宅だってデザインは必要だし、もっと自由につくってもらいたいし住んでもらいたい。そして、その後定住先が決まればそのユニットを移設し、次には建築としても利用できる。なんどでも移設して使える住宅を作りたいと。
そう、なんどでも建つ住宅である。
きちんと確認申請もだせ、当初は仮設だが、いずれは恒久的な住まいになるような・・・。そんな柔軟な住宅である。
よいコンセプトである。引越しや移住など・・・これからも激動することが予想される生活、必要な機能や設備、間取りやデザインの嗜好は経年と共に変化してゆくだろうが、スチールフレームだけは家族のインフラストラクチュアのように恒久的に使い続けられる・・・。
大事なことは・・・
丈夫で耐久性があること、そして冗長性にすぐれ柔軟なシステムであるということ。家族の変化をいつでも緩やかに、そしておおらかに、そして頑丈に包み込むような、そんな可変性にすぐれたシステムを提示したいとのことである。
一人でも多くの人がこのシステムを使って楽しく希望に満ち、そして住まいによる負担からの開放の手助けができたらと強く思う。もちろん僕は2つ返事で了承、いくつでも設計案を作ることを約した。
NPO法人を窓口に何社かの連名のプロジェクトになるそうです。楽しみです。