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ガバナンス・・・

最近、ガバナンスという言葉をよく聞く。今までもコンプライアンスとかパラダイムとか・・・、横文字にする必要があるのかって思うような言葉が流行にも似た感じで使われている。

ということで、ガバナンスという言葉について僕なりに考えてみた。

建築の現場は一つの組織だと思う。その長たる現場監督の能力如何で建築の精度や出来栄えは左右される。我々も工務店を決定する際にはその工務店の規模や経験だけでなく、可能な限り現場を采配する現場監督により決定したいと思っている。

その昔、サッカーワールドカップの直前に三浦カズと北澤がメンバーから外されるというショッキングな出来事があった。そしてトルシエ監督も同じような時期に俊輔を外した。これも一つの組織統率の形式である。残されたメンバーにはより高い緊張感を与え、時に遺恨や怒りにより一つの組織を纏め上げる手法なのだろう。僕自身は支配する側に立った事がないのでわからないが・・・、カンフル剤というか、もはやドーピングのような安直な方法だと思いつつも短期的には有効な手段だと思う。組織の管理職をこれ見よがしに左遷するなどの手法の同じような物だろう。美しくはない・・・。ちなみに僕は長年の三浦カズファンである。今でも代表メンバー発表には一抹の期待を持っている。

また、仮想敵を捏造するという方法もある。例えば、某国が使う手法でもあるが、この場合仮想敵は衆目を集め同意を得やすいこと、そして潜在意識や感情に直接訴えられる対象がよい。理屈よりも感情、直義より間接である。大方、戦争などという物はこの手法の究極の成れの果てであると思う。

ある組織、共同体、コミュニティは煎じ詰めれば一つの闘争のための手段だったのかもしれない。人類は有史以来、争いに勝つための組織作りこそが大きな課題だったのだろう。宗教や国家観も一つの組織化を実践する手段という側面もあるのかもしれない。現代では経済という戦争のような物に国家をはじめ様々な組織がそのすべてをかけて争っている。そしてそこでも支配の形式は色々と試みられている。見えるのならまだよいけど・・・、見えない支配ほど怖い物はない。

話がかなり脱線しているが、上記のようなの手法は僕にとってはむしろ唾棄すべき手法である。とはいえ統率力、リーダーシップということは現場の監督にとって最も大事な能力だと思われる。もっと健康的な組織の統率の方法はないのだろうか。

現在の現場を担当してもらっている現場監督は、目を見張るリーダーシップを発揮してくれている。そしてそれに比例するかのように仕上がりも美しく、施主の満足度も勝ち得ている。

この監督の手法は、僕の高校時代のテニス部の主将を思い出させてくれる。彼はテニスの技術は誰もが認めるところであったが、人一倍の努力をする人でもあった。そして僕らは彼のもくもくと前へ進む後姿を見ながら一致団結していた。すばらしく健康的な組織とその長であったと思う。まあ、高校のテニス部は残念ながらインターハイ出場というチームにとっての大きな目標には後一歩で達せず、結果を伴った組織であったとはいえないが・・・。まあ、理想かもしれないが・・・、ちと甘いですかね・・・。

今回の現場で現場監督の見せてくれた一つの統率の手法は僕に色々なことを与えてくれたように思う。

今までも、優秀な現場監督と仕事を幾つもしてきたが・・・、そんな監督に出会うたびに、僕自身、人生とは険しい修行のようなだなと思う。そして、このような人物に関われ、現場と時間を共有できることがこの仕事を継続していてよかったな、と思える瞬間でもある。

一つだけ、二人の監督に共通する手法を紹介したい。

彼は常に各職方にたいして濃密にコミュニケーションをとり続ける。一つの問題や課題が起こるとその場で担当職方に電話をして確認をする。すべての事柄をそのとき、その瞬間に解決なり把握を試みる。ちなみにその電話は昼休みだろうが、休日だろうが、夜九時だろうが厭わない・・・。相手はたまったものではないだろうが・・・、皆と情報や問題点を共有しながら、自身を先頭に突き進んでゆく。メールは一切使わず、すべて打ち合わせか電話による口答でのコミュニケーションであるのもこの監督の特徴の一つである。たぶん、メールによる一方的な伝達を嫌っているのだろう。

もう一人の監督の手法は、すべてを自身で納得するまで考え抜き、そして采配する。彼はワンボックスカーを改造し、車内には図面からサンプル、膨大なカタログ類、コンピュータからスキャナまでを整然と装備し、さながら移動現場事務所である。ここで、かれは現場における状況のすべて把握し、自身で施工図を作成、検討し、現場に指示をする。彼はすべてを把握するだけでなく、すべてに納得しているので誰もが彼の指示通りに動かざるを得ない。僕の、ここはもう少しシャープにね・・・とか、ここは1センチほどの陰影が出るようにね・・・とか、ここは指を切らない程度にエッジを出してね・・・、とかおよそ設計者とは思えないような子供じみた内容も、即座に現場の状況を鑑みた上で図面化し、現場を進めている。

両者にいえることは、とにかく自身が矢面に立って進み、そして正直である。たまにある間違いは間違いと即座に認め、その上で最善の方法を提案・・・。これでは皆もついていかざるを得ないだろう。

彼らもこの域まで到達するには様々な修羅場があったことだろうが・・・、見てまねをできるようなものではなさそうだ。

静岡県東部、埼玉県南部、東京都北部で工務店、現場監督をお探しの方、ご一報ください。紹介します。