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大社の杜みしまの現場です。

三嶋大社のちょうど向かいにあたる個所に、かつての宿場町としての賑わいを再度創出しようという試みです。

http://taishanomori.jp/

奥に細長く広がる敷地に13店舗からなる商業施設と店舗に面するように広がる路地裏のような木製デッキプラザを設けています。

建設会社でもあるオーナーさんからいただいたリクエストは・・・

”粋な場所と建築を一緒に造りましょう”

です。建築だけではなく”場”そのものをつくろうと・・・、このようなリクエストを出すオーナーさんはとても粋ですね。

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しかし粋とは”少々”縁遠い私、残念なことにそもそも”粋”ってなんだ?とその場でWIKIで検索するような羞恥のかけらもないほどではありましたが・・・。
ミッションが”粋な建築”を造ることであり、もし仮に”粋に建築”造れとのことでしたら残念ながら私は断念するほかありませんでした。
その後時間をいただき何とか自分なりに整理し、そしていくつか忘れるほどの案を作成し、時に自身のあまりのふがいなさに涙を・・・そして苦し紛れに行き着いたアイデアが

”足場に使うよくある単管パイプを構造体のすべてにおいて使う!”でした。

どこにでもある足場用の単管パイプをロの字の形にユニット化し構造体として使用し、お祭りや縁日等々どこかで見たことがあるような既視感、親密感・・・しかし実際は高度な技術によって裏打ちされているというような、そんな構造物としての楽しさと建設会社としての建築施工の技術力を共存、両立させる在り方を ”粋な建築” として作ることを意図しました。

なぜ足場の単管なのか・・・、

柱や梁などの建築を構成する部材もすべて一人の力で(女性でもさらには非力な私でも・・・)運べて組み立てることが可能な範囲の重量とサイズにしよう!と考えたからです。
完成形は大きな建築にもかかわらず、各パーツを人力で運んで組み立てて・・・そんなプリミティブで成り立ちがわかりやすく、来訪者に”造る人たちの物語や息遣い”が手に取るようにわかる・・・建築って・・・気が付いてくれるような・・・。
つまり従来の建設のような重厚長大産業丸出しのパワープレーや既製品の集積のようなどこにでもある退屈で普通の建物とは一線を画した、

人が ”自身の力と想いで造ることが可能な物理的な創造物” としての建築の在り方。

”楽しくワクワクするようなユーモア”

そして同時にオーナーさんの建設会社として”造る喜びと建築をする楽しさの宣言”を高らかに表象することを目指しています。

自分でもまだ整理しきれていないのでわかりにくいですが・・・
建築的にアクロバティックな形状や、いわゆる恣意性のある形のようなものを徹底的に排除して当たり前のことを当たり前に粛々と積み重ね・・・、そして同時に建築に物語とヒューマニズム、アイデアとテクノロジーを共存させることを志向しています。

ある意味でとても面白く、そして粋だと思ってしまいました。当初は・・・。

しかし、毎度のことながらそこからがまた苦行の設計作業、そして現場の始まり・・・協働設計者、現場監督さん、鉄骨業者さん、関係者すべての人に対して”難しいね・・・”という発言を厳禁し、かわりに”何とかなるさ!!”という空虚な言葉を強要し、そして何とかここまでたどり着きました。

楽しい人たちによる楽しいお店が連なり、さらに現場監督の想いや、鍛冶屋さんをはじめ様々な職人さんたちの息使いや手の痕跡も満載、構造物としても成り立ち方や各所の細部の形状・・・
建築って面白いね!!愉快だね!!って見ていただける様な建築の解剖書のような感じになっています。

見た目は普通だけど・・・知覚の解像度や、視点を変えると大変なことが起ってる!!!という感じです。

ちょっと立ち止まって建築を ”観て・・・!” ”診て・・・!!” ”視て・・・!!!”、そして触って!!って感じでしょうか・・・。
”見て・・・”だけでは造った皆さんの想いが成仏できません!!!!って感じです。
楽しみにしていてください。